相続財産の評価方法【資産別ガイド】

相続財産の評価の原則

相続税における財産の評価は、原則として「相続開始時(被相続人が亡くなった日)の時価」で行います。この時価の算定方法は、国税庁が定める「財産評価基本通達」に詳しく規定されています。

財産の種類によって評価方法が異なるため、正確な相続税額を算出するには、各財産の特性を理解し、適切な評価方法を適用することが重要です。評価方法を誤ると、相続税の過大納付や過少申告につながる可能性があります。

財産の種類評価方法時価との関係
土地(市街地)路線価方式時価の約80%
土地(郊外)倍率方式固定資産税評価額×倍率
建物固定資産税評価額時価の約60〜70%
上場株式相続開始日等の株価ほぼ時価
非上場株式類似業種比準方式等ケースにより異なる
預貯金残高+経過利子ほぼ時価
生命保険金受取金額受取額そのまま

土地の評価方法

土地の相続税評価は、相続財産の中でも最も複雑で金額的影響が大きい項目です。主に路線価方式倍率方式の2つの方法があります。

路線価方式

路線価方式は、市街地にある土地の評価方法です。道路(路線)ごとに設定された1㎡あたりの価格(路線価)に、土地の面積を掛けて算出します。路線価は毎年7月に国税庁が公表しており、国税庁ホームページの「路線価図」で確認できます。

基本的な計算式:路線価 × 地積(㎡)= 評価額

実際の計算では、以下のような補正率を適用して評価額を調整します。

補正項目内容評価への影響
奥行価格補正奥行が短すぎる・長すぎる土地減額
不整形地補正形が不整形な土地減額
間口狭小補正間口が狭い土地減額
側方路線影響加算角地や準角地増額
二方路線影響加算裏面にも道路がある土地増額
がけ地補正がけ地を含む土地減額

倍率方式

路線価が設定されていない地域の土地は、倍率方式で評価します。固定資産税評価額に国税局が定める一定の倍率を掛けて計算します。

計算式:固定資産税評価額 × 倍率 = 評価額

💡 土地の評価減のチェックポイント

土地の評価では、形状や接道条件などによる各種補正を適切に適用することが節税の鍵です。特に不整形地補正やがけ地補正は見落とされやすく、適用することで評価額を10〜30%程度下げられるケースもあります。相続税の申告では必ず現地調査を行い、適用可能な補正率を確認しましょう。

建物の評価方法

建物の相続税評価額は、固定資産税評価額がそのまま使われます。固定資産税評価額は、市区町村が毎年送付する固定資産税の課税明細書で確認できます。

自用の建物

自分で使用している建物は、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。一般的に固定資産税評価額は建築費用の60〜70%程度とされるため、建物は比較的低い評価となります。

賃貸している建物

賃貸に出している建物は、借家権割合(通常30%)を控除して評価します。

計算式:固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)

例えば、固定資産税評価額が2,000万円のアパート(全室賃貸中)の場合:2,000万円 ×(1 − 0.3 × 1.0)= 1,400万円となります。

株式の評価方法

上場株式

上場株式は、以下の4つの価格のうち最も低い価格で評価します。

  • 相続開始日の終値
  • 相続開始日の属する月の終値の月平均額
  • 相続開始日の属する月の前月の終値の月平均額
  • 相続開始日の属する月の前々月の終値の月平均額

4つの価格を比較して最も低い価格を採用できるため、株価が急落した直後に相続が発生した場合は、月平均額を使うことで有利になるケースがあります。

非上場株式(取引相場のない株式)

非上場株式の評価方法は、株主の区分と会社の規模によって異なります。

会社の規模原則的評価方式特例的評価方式
大会社類似業種比準方式純資産価額方式との選択可
中会社類似業種比準方式と純資産価額方式の併用Lの割合により配分
小会社純資産価額方式類似業種比準方式との併用可(L=0.50)

預貯金・現金の評価

預貯金は、相続開始日の残高に経過利子(既経過利子の手取額)を加えた金額で評価します。普通預金は残高そのまま、定期預金は残高に既経過利子の手取額を加算します。

現金はそのままの金額が評価額となります。いわゆるタンス預金も相続財産に含まれますので、漏れなく申告する必要があります。

生命保険金の評価

被相続人の死亡により支払われる生命保険金は、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。ただし、「500万円×法定相続人の数」の非課税限度額があります。

課税対象額 = 受取保険金額 − 非課税限度額(500万円×法定相続人の数)

その他の財産の評価

自動車

中古車市場価格や査定額を参考に評価します。同等の中古車の売買実例価格や、ディーラーの買取査定額が参考になります。

ゴルフ会員権

取引相場のあるゴルフ会員権は、相続開始日の取引価格の70%で評価します。取引相場のないものは、株式と預託金の合計額等で評価します。

貴金属・宝石・美術品

専門家による鑑定評価額や、業者の買取価格を参考に時価で評価します。高額な美術品は鑑定書を取得しておくことをお勧めします。

知的財産権(著作権・特許権等)

将来の収入を基に評価します。著作権は、年平均印税収入×0.5×評価倍率で計算するのが一般的です。

⚠ 財産の計上漏れに注意

相続財産の計上漏れは税務調査で最も指摘されやすい項目です。被相続人名義の財産だけでなく、名義預金(実質的に被相続人のもの)や、生前贈与で移転した財産(7年以内)も忘れずに確認しましょう。

固定資産税 概算計算ツール

固定資産税評価額と種類を入力して、年間固定資産税の概算額を計算できます。

固定資産税の課税明細書に記載されている評価額

年間固定資産税額(概算)

標準税率1.4%で計算(都市計画税は含みません)

-

⚠ この計算結果はあくまで概算です。正確な金額は税理士にご相談ください。税制改正により計算方法が変更される場合があります。

不動産取得税 計算ツール

固定資産税評価額と種類を入力して、不動産取得税の概算額を計算できます。相続以外(贈与・売買)で不動産を取得した場合に課税されます。

取得する不動産の固定資産税評価額

不動産取得税額(概算)

※住宅の軽減措置は考慮していません

-

⚠ この計算結果はあくまで概算です。正確な金額は税理士にご相談ください。税制改正により計算方法が変更される場合があります。

よくある質問

相続税の評価額と時価は同じですか?
一般的に相続税評価額と時価(市場価格)は異なります。土地は路線価で評価され、時価の約80%程度です。建物は固定資産税評価額で評価され、時価の約60〜70%程度です。このため、不動産は現金より相続税評価額が低くなる傾向があります。
路線価がない地域の土地はどう評価しますか?
路線価が設定されていない地域(主に郊外や農村部)の土地は、倍率方式で評価します。固定資産税評価額に国税局が定める一定の倍率を掛けて算出します。倍率は国税庁のホームページで確認できます。
上場していない会社の株式はどう評価しますか?
非上場株式(取引相場のない株式)は、会社の規模に応じて類似業種比準方式、純資産価額方式、またはその併用方式で評価します。会社の資産内容や業種、株主の区分によって評価方法が異なるため、税理士に相談することをお勧めします。
海外にある財産はどう評価しますか?
海外に所在する財産も相続税の課税対象となります。評価方法は原則として日本の財産評価基本通達に準じますが、現地の市場価格や為替レートなども考慮されます。海外不動産は現地の鑑定評価書を取得することが一般的です。
借金(債務)は相続財産から差し引けますか?
はい、被相続人の債務(借入金、未払い税金、未払い医療費など)は相続財産から控除できます。また、葬式費用(通夜・告別式の費用、火葬費用等)も債務控除の対象となります。ただし、墓石の購入費用や香典返しの費用は控除対象外です。