相続税の計算方法と申告ガイド

相続税とは

相続税とは、亡くなった方(被相続人)の財産を相続や遺贈によって取得した際に、その取得した財産の価額に対して課される国税です。日本の相続税は、2015年(平成27年)の税制改正により基礎控除額が大幅に引き下げられ、課税対象者が従来の約2倍に増加しました。

相続税は、被相続人の遺産総額から基礎控除額を差し引いた「課税遺産総額」に対して、法定相続分に応じた税率を適用して計算されます。この仕組みを「法定相続分課税方式」といい、日本独自の計算方法となっています。

ℹ 相続税の目的

相続税には、富の集中を防止し社会に還元する「富の再分配機能」と、所得税の補完機能という2つの重要な目的があります。一定額以上の遺産に対してのみ課税されるため、すべての相続に相続税がかかるわけではありません。

課税対象となる財産

相続税の課税対象となる財産は、被相続人が亡くなった時点で所有していたすべての財産です。具体的には以下のものが含まれます。

本来の相続財産

不動産(土地・建物)、預貯金、有価証券(株式・投資信託・国債など)、現金、貴金属・宝石、自動車、事業用資産、ゴルフ会員権、著作権・特許権などの知的財産権が該当します。これらは被相続人の名義であった財産のうち、金銭的価値があるものすべてが対象となります。

みなし相続財産

民法上は相続財産ではないものの、相続税法上は相続財産とみなされるものがあります。代表的なものが「生命保険金」と「死亡退職金」です。被相続人の死亡によって支払われるこれらの金銭は、実質的に相続財産と同様の経済的効果があるため、課税対象とされています。

ただし、生命保険金・死亡退職金にはそれぞれ「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠が設けられています。

⚠ 注意:名義預金

被相続人以外の名義であっても、実質的に被相続人の財産と認められるもの(名義預金など)は相続税の課税対象となります。税務調査で最も指摘されやすいポイントの一つですので注意が必要です。

基礎控除の仕組み

相続税には「基礎控除」が設けられており、遺産総額がこの基礎控除額以下であれば相続税は一切かかりません。基礎控除額は以下の算式で計算されます。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

法定相続人の数ごとの基礎控除額一覧
法定相続人の数基礎控除額
1人3,600万円
2人4,200万円
3人4,800万円
4人5,400万円
5人6,000万円

例えば、配偶者と子供2人の合計3人が法定相続人の場合、基礎控除額は4,800万円です。遺産総額が4,800万円以下であれば、相続税の申告も不要です。遺産総額が6,000万円であれば、課税遺産総額は1,200万円(6,000万円 - 4,800万円)となります。

相続税の税率表

相続税の税率は、法定相続分に応じた各取得金額に対して、以下の累進税率が適用されます。税率は10%から最高55%までの8段階です。

相続税の速算表(2015年1月1日以後の相続に適用)
法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%なし
1,000万円超~3,000万円以下15%50万円
3,000万円超~5,000万円以下20%200万円
5,000万円超~1億円以下30%700万円
1億円超~2億円以下40%1,700万円
2億円超~3億円以下45%2,700万円
3億円超~6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

💡 速算表の使い方

例えば、法定相続分に応じた取得金額が5,000万円の場合、「5,000万円 × 20% - 200万円 = 800万円」が税額となります。この速算表を使うことで、累進税率の段階計算を簡略化できます。

相続税計算の流れ

相続税の計算は以下のステップで行います。複雑に見えますが、順を追って理解すれば概算を把握できます。

ステップ1:課税価格の合計額を求める

各相続人が取得した財産の合計額(本来の相続財産+みなし相続財産+相続開始前の贈与財産)から、非課税財産・債務・葬式費用を差し引いた金額が課税価格の合計額です。

ステップ2:課税遺産総額を求める

課税価格の合計額から基礎控除額を差し引きます。この金額が0以下であれば、相続税は発生しません。

ステップ3:相続税の総額を計算する

課税遺産総額を法定相続分で仮に按分し、各相続人の取得金額に税率表を適用して個別の税額を算出します。これらを合計したものが「相続税の総額」です。

ステップ4:各人の相続税額を算出する

相続税の総額を、各相続人が実際に取得した財産の割合に応じて按分し、各人の相続税額を求めます。さらに、配偶者の税額軽減や未成年者控除などの税額控除を適用して、最終的な納付税額が確定します。

相続税計算シミュレーター

遺産総額と相続人の情報を入力して、相続税の概算額を計算できます。

遺産の情報

万円

不動産・預貯金・有価証券等の合計額

万円

被相続人が保険料を負担した保険金の合計

万円

勤務先から支給される死亡退職金

相続人の情報

配偶者の有無

子供がいない場合のみ相続人となります

子供・親がいない場合のみ相続人となります

⚠ この計算結果はあくまで概算です。正確な金額は税理士にご相談ください。税制改正により計算方法が変更される場合があります。

相続税について専門家に相談する

相続税の申告は複雑なため、税理士への相談をお勧めします。初回無料相談を実施している事務所もあります。

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よくある質問

相続税はいくらから発生しますか?
相続税は基礎控除額を超えた場合に発生します。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。例えば、配偶者と子供2人が相続人の場合、基礎控除額は4,800万円となり、遺産総額がこれを超えなければ相続税はかかりません。
相続税の申告期限はいつですか?
相続税の申告・納付期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。期限を過ぎると延滞税や加算税が課される場合がありますので、早めの準備が重要です。
配偶者は相続税が免除されますか?
配偶者には「配偶者の税額軽減」制度があり、配偶者が取得した遺産が法定相続分以下、または1億6,000万円以下であれば相続税はかかりません。ただし、この特例を受けるためには申告が必要です。
生命保険金にも相続税がかかりますか?
はい、被相続人が保険料を負担していた生命保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。ただし「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があり、この金額までは非課税となります。
相続税の計算で使う税率は何%ですか?
相続税の税率は10%から55%の累進課税です。法定相続分に応じた取得金額が1,000万円以下なら10%、3,000万円以下なら15%、5,000万円以下なら20%と段階的に上がり、6億円超の部分には最高税率55%が適用されます。