金融資産の相続手続きと評価方法
預貯金の相続手続き
預貯金は最も身近な金融資産であり、相続手続きにおいても中心的な存在です。被相続人が保有していた銀行口座・ゆうちょ口座・信用金庫口座などの預貯金は、すべて相続財産に含まれます。
金融機関は名義人の死亡を確認すると、口座を凍結します。凍結後は入出金ができなくなるため、公共料金の引き落としなどが止まる点に注意が必要です。凍結解除のためには、以下の書類を各金融機関に提出します。
預貯金の相続に必要な書類
| 書類 | 遺言書がある場合 | 遺産分割協議の場合 |
|---|---|---|
| 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで) | ○ | ○ |
| 相続人全員の戸籍謄本 | ○ | ○ |
| 遺言書(検認済) | ○ | − |
| 遺産分割協議書 | − | ○ |
| 相続人全員の印鑑証明書 | △(金融機関による) | ○ |
| 被相続人の通帳・キャッシュカード | ○ | ○ |
💡 預貯金の仮払い制度
2019年7月施行の改正民法により、遺産分割前でも各相続人は、各口座ごとに「残高×3分の1×法定相続分」(上限150万円)までを単独で引き出せるようになりました。葬儀費用や当面の生活費として活用できる制度です。
預貯金の相続税評価
普通預金は死亡日の残高がそのまま評価額となります。定期預金の場合は、死亡日時点の残高に既経過利息(源泉徴収税額控除後)を加算した金額が評価額です。外貨預金は、死亡日のTTB(対顧客直物電信買相場)レートで円換算します。
株式の相続
株式は種類によって相続手続きと評価方法が異なります。上場株式と非上場株式に分けて解説します。
上場株式の相続税評価
上場株式は、以下の4つの価額のうち最も低い価額で評価されます。
| 評価方法 | 内容 |
|---|---|
| ①課税時期の終値 | 被相続人が亡くなった日の終値 |
| ②課税時期の月平均 | 亡くなった日が属する月の毎日の終値の月平均額 |
| ③前月の月平均 | 亡くなった月の前月の毎日の終値の月平均額 |
| ④前々月の月平均 | 亡くなった月の前々月の毎日の終値の月平均額 |
株式の相続手続きは、被相続人の証券口座がある証券会社に連絡し、相続人名義の口座へ移管する形で行います。相続人が同じ証券会社に口座を持っていない場合は、新規開設が必要です。
非上場株式の評価
非上場株式(同族会社の株式など)は、会社の規模に応じて類似業種比準方式または純資産価額方式で評価されます。評価が複雑なため、税理士への相談が推奨されます。
投資信託の相続
投資信託は、死亡日時点の基準価額に口数を乗じて評価します。具体的には、死亡日の基準価額から信託財産留保額と解約手数料を差し引いた金額が評価額となります。
投資信託の相続手続きは、販売会社(証券会社や銀行)に連絡して行います。相続人は、投資信託を解約して現金で受け取るか、自分の口座に移管して継続保有するかを選択できます。
ℹ NISA口座の相続
被相続人がNISA口座で保有していた金融資産は、相続人のNISA口座に非課税のまま移管することはできません。一般の課税口座に移管されます。ただし、移管時の時価が取得価額となるため、移管後の値上がり益のみが課税対象となります。
死亡退職金の取扱い
被相続人の死亡によって支給される死亡退職金は、本来の相続財産ではありませんが、「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。死亡後3年以内に支給が確定した退職手当金等が対象です。
死亡退職金の非課税枠
死亡退職金には、生命保険金と同様の非課税枠が設けられています。
非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
例えば、法定相続人が配偶者と子2人の計3人の場合、1,500万円までが非課税となります。退職金がこの非課税枠を超える場合、超過分が相続税の課税対象です。
⚠ 退職金の受取人
死亡退職金の受取人が相続人でない場合、非課税枠の適用を受けることができません。この場合、退職金の全額が課税対象となるため注意が必要です。
退職金手取り計算ツール
死亡退職金の非課税枠と課税対象額を自動計算します。退職金額と法定相続人数を入力してください。
支給される死亡退職金の額を万円単位で入力してください
非課税枠
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課税対象額
※退職金が非課税枠以下の場合は0円となります。
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手取り概算額
※相続税率を仮に10%として概算しています。実際の税率は課税遺産総額により異なります。
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⚠ この計算結果はあくまで概算です。正確な金額は税理士にご相談ください。税制改正により計算方法が変更される場合があります。