遺言書の種類と書き方ガイド
遺言書とは
遺言書とは、自分が亡くなった後の財産の処分方法や身分に関する事項について、生前に書面で意思を表示するための法的文書です。民法では「遺言」と呼び、法律に定められた方式に従って作成された遺言書には法的拘束力があります。
遺言書を作成することで、法定相続分とは異なる割合で遺産を分配したり、相続人以外の第三者に財産を遺贈したり、子の認知や後見人の指定を行うことができます。遺言書は遺言者の最終意思を実現するための重要な手段であり、相続トラブルを未然に防ぐためにも大きな役割を果たします。
ℹ 遺言書で定められる主な事項
- 財産の処分:相続分の指定、遺贈、信託の設定など
- 身分に関する事項:子の認知、未成年後見人の指定
- 相続に関する事項:相続人の廃除、遺産分割方法の指定、遺産分割の禁止(最長5年)
- 遺言の執行:遺言執行者の指定
遺言書は遺言者の死亡により効力が発生します(民法第985条)。そのため、遺言者が生存中はいつでも自由に撤回・変更することができ、最新の遺言書が優先されます。相続が「争族」とならないために、遺言書の作成は非常に有効な対策です。
遺言書の3つの種類と比較
日本の民法では、普通方式の遺言として「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類が定められています。それぞれの特徴を理解し、自分に合った方式を選びましょう。
| 項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 |
|---|---|---|---|
| 作成方法 | 遺言者が全文を自筆で書く(財産目録はPC可) | 公証人が遺言者の口述を筆記して作成 | 遺言者が作成し封印、公証人に提出 |
| 費用 | 無料(法務局保管は3,900円) | 公証人手数料が必要(財産額に応じて変動) | 公証人手数料11,000円 |
| 検認の要否 | 必要(法務局保管の場合は不要) | 不要 | 必要 |
| 証人 | 不要 | 2名以上必要 | 2名以上必要 |
| メリット | 手軽に作成可能、費用がかからない、秘密にできる | 無効になるリスクが極めて低い、原本を公証役場で保管 | 内容を秘密にしつつ存在を証明できる |
| デメリット | 方式不備で無効になるリスク、紛失・改ざんの恐れ | 費用がかかる、証人に内容が知られる | 方式不備のリスクあり、実務での利用が少ない |
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者が遺言の全文・日付・氏名を自書し押印する方式です。最も手軽に作成でき費用もかかりませんが、方式を誤ると無効になるリスクがあります。2019年の法改正で財産目録についてはパソコンでの作成が認められ、また法務局での保管制度も創設されました。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人が関与して作成するため法的に最も確実な方式です。原本が公証役場に保管されるため紛失・改ざんのリスクがなく、家庭裁判所での検認も不要です。費用はかかりますが、確実性を重視する方に最もおすすめの方式です。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしたまま、遺言書の存在を公証人に証明してもらう方式です。遺言者が署名・押印して封印し、公証人と証人2名の前で提出します。実務ではほとんど利用されていませんが、遺言内容を他者に知られたくない場合に有効です。
遺言書を書くべきケース
遺言書は誰でも作成できますが、特に以下のようなケースでは遺言書の作成が強く推奨されます。
- 子どもがいない夫婦:配偶者に全財産を相続させたい場合、遺言書がないと配偶者の他に被相続人の兄弟姉妹も相続人となります。
- 相続人以外に財産を遺したい場合:内縁の配偶者、事実上の養子、お世話になった方など法定相続人でない人に財産を譲りたい場合は遺言書が不可欠です。
- 事業を営んでいる場合:事業用資産や株式を特定の後継者に集中させたい場合は、遺言書で明確に指定しておく必要があります。
- 相続人間で紛争が予想される場合:相続人同士の関係が複雑な場合や、前婚の子がいる場合などは、遺言書で分割方法を指定しておくことでトラブルを防げます。
- 特定の相続人に多く遺したい場合:介護をしてくれた子に多く遺したいなど、法定相続分と異なる分割を希望する場合は遺言書が必要です。
- 社会貢献のために寄付したい場合:遺産の一部を慈善団体やNPOに寄付したい場合は、遺言書で遺贈を指定します。
❗ 遺留分に注意
遺言書で自由に財産を分配できますが、兄弟姉妹を除く法定相続人には「遺留分」という最低限保障された取り分があります。遺留分を侵害する遺言も無効にはなりませんが、遺留分権利者から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。遺言書の作成時は遺留分にも配慮しましょう。
遺言書を作成するメリット
遺言書を作成することには、以下のような多くのメリットがあります。
相続トラブルの防止
遺言書で遺産の分割方法を明確にしておくことで、相続人間の争いを予防できます。遺産分割協議は相続人全員の合意が必要であり、意見が対立すると長期化するケースが少なくありません。遺言書があれば、原則として遺言書の内容に従って遺産が分割されるため、協議の負担が大幅に軽減されます。
相続手続きの迅速化
遺言書がある場合、遺産分割協議を行わずに相続手続きを進められることが多く、預貯金の払い戻しや不動産の名義変更をスムーズに行うことができます。特に公正証書遺言で遺言執行者を指定しておけば、手続きはさらに効率化されます。
自分の意思の実現
法定相続分に縛られず、自分の希望どおりに財産を分配することができます。お世話になった方への感謝、事業承継の方針、社会貢献への意思など、自分の想いを確実に実現するための手段が遺言書です。
相続人以外への遺贈が可能
遺言書がなければ、法定相続人のみが財産を取得します。遺言書があれば、法定相続人以外の個人や法人にも財産を遺すことが可能です。長年連れ添った内縁のパートナーや、献身的に介護してくれた方への感謝を形にすることもできます。
遺言書に関する記事一覧
遺言書について詳しく学ぶために、以下の記事を用意しました。それぞれのテーマを掘り下げて解説しています。