動産(自動車・貴金属・美術品)の相続と評価方法

動産とは

法律上、財産は不動産(土地・建物)動産(不動産以外のすべての有体物)に分類されます。相続においては、自動車、貴金属、美術品、家財道具、衣類、現金(紙幣・硬貨)など、不動産以外の有形財産はすべて動産として扱われます。

動産は不動産と比べて見落とされがちですが、自動車や美術品、貴金属類の中には高額なものも多く、正確な評価と適切な相続手続きが必要です。特に自動車は名義変更の手続きが不可欠であり、放置するとさまざまな問題が生じます。

ℹ 動産と不動産の違い

不動産は登記制度によって所有者が公示されていますが、動産には原則として登記制度がありません(自動車は例外で登録制度があります)。そのため、動産の所有権の証明は不動産と比べて難しい場合があります。被相続人が所有していた動産を漏れなくリストアップすることが、適切な相続手続きの第一歩です。

自動車の相続手続き

自動車は動産の中でも特に相続手続きが重要です。名義変更(移転登録)を行わないと、売却・廃車ができないだけでなく、保険の適用にも問題が生じる可能性があります。

自動車の名義変更に必要な書類

書類取得先備考
自動車検査証(車検証)被相続人が保管車内のグローブボックスに保管されていることが多い
被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)市区町村役場相続人の確認のために必要
相続人全員の戸籍謄本市区町村役場相続関係の証明
遺産分割協議書相続人で作成自動車を取得する人が決まっている場合
新所有者の印鑑証明書市区町村役場発行から3ヶ月以内のもの
新所有者の車庫証明書警察署保管場所が変わる場合に必要
移転登録申請書(OCRシート)運輸支局窓口で入手可能

手続きは管轄の運輸支局(陸運局)で行います。普通自動車は運輸支局、軽自動車は軽自動車検査協会が窓口です。手続きには自動車取得税(環境性能割)がかかる場合がありますが、相続による名義変更では通常免除されます。

自動車の相続税評価

自動車の相続税評価額は、死亡日時点での売買実例価額(中古車としての時価)で評価されます。実務上は、中古車買取業者の査定額や、中古車情報サイトでの同型車の販売価格を参考にすることが多いです。一般的な乗用車で年式が古い場合は、評価額が数十万円以下になることも珍しくありません。

💡 車を相続しない場合

相続人が車を必要としない場合は、売却または廃車の手続きを行います。売却する場合は、まず相続人への名義変更を行ってから売却手続きを進めます。ローンが残っている場合は、ローン会社に連絡して残債の精算方法を確認しましょう。

貴金属・美術品の評価

金、プラチナ、宝石類、絵画、骨董品などは、高額になることがあるため、適切な評価が特に重要な動産です。

貴金属の評価方法

金やプラチナなどの貴金属は、死亡日の地金相場で評価します。田中貴金属工業や三菱マテリアルなどの大手地金商が公表する小売価格が参考になります。宝石が付いたジュエリーの場合は、宝石と地金部分を分けて評価するか、ジュエリー全体の売買実例価額で評価します。

美術品・骨董品の評価方法

美術品や骨董品は、以下の方法で評価されます。

  • 売買実例価額:同じ作品や類似作品の取引事例がある場合、その価額を参考にします
  • 精通者意見価格:美術品鑑定士や古美術商など、専門家による鑑定価格です
  • 取得価額:売買実例も鑑定も困難な場合、購入時の価格を参考にすることがあります

⚠ 美術品の申告漏れに注意

税務調査では、美術品や骨董品の申告漏れが指摘されるケースが少なくありません。被相続人が美術品の収集家であった場合は、すべての作品をリストアップし、必要に応じて専門家の鑑定を受けることが重要です。

家財道具の相続

テレビ、冷蔵庫、洗濯機、家具、食器類などの一般的な家財道具も、法律上は相続財産に含まれます。ただし、中古品としての市場価値は低いため、実務上は家財一式として一括評価されることが一般的です。

一般的な家庭の家財道具であれば、数万円~数十万円程度の評価額で申告するケースが多いです。ただし、高級ブランドの家具やヴィンテージ家電、コレクターズアイテムなど、一般的な家財と比べて価値が高いものについては、個別に評価する必要があります。

動産の種類別評価方法一覧

動産の種類評価方法評価の目安・参考資料
自動車売買実例価額(中古車時価)中古車買取査定額、中古車情報サイトの販売価格
金・プラチナ(地金)死亡日の地金相場田中貴金属工業等の公表小売価格
宝石・ジュエリー売買実例価額または鑑定価格宝石鑑定士による鑑定書
絵画・美術品売買実例価額または精通者意見価格美術品鑑定士の鑑定書、オークション落札価格
骨董品・古美術精通者意見価格古美術商や鑑定士による鑑定
家財道具一式一括評価中古品としての時価(通常は少額)
ゴルフ会員権取引相場価格×70%会員権取引業者の相場情報
リゾート会員権取引相場がある場合はその価格×70%取引業者の相場情報
船舶売買実例価額同型船の中古取引価格
機械・器具再調達価額−減価償却費新品価格から使用年数に応じて減額

動産の相続手続きの流れ

動産の相続手続きは、以下のステップで進めます。

  1. 1

    動産のリストアップ

    被相続人が所有していた動産をすべてリストアップします。自宅内だけでなく、貸金庫、トランクルーム、別荘、勤務先なども確認しましょう。

  2. 2

    評価額の算定

    各動産の相続税評価額を算定します。自動車は中古車査定、貴金属は地金相場、美術品は鑑定士に依頼するなど、種類に応じた方法で評価します。

  3. 3

    遺産分割協議

    相続人全員で、各動産を誰が取得するかを話し合います。動産は分割が難しいものが多いため、代償分割(一人が取得し他の相続人に金銭で補償)や換価分割(売却して代金を分配)も検討します。

  4. 4

    名義変更・所有権移転

    自動車は運輸支局で名義変更を行います。その他の動産は登記制度がないため、引渡し(占有の移転)により所有権が移ります。ゴルフ会員権など名義変更が必要なものは、各管理団体に届出を行います。

  5. 5

    相続税の申告

    動産の評価額を含めた相続財産の合計額が基礎控除を超える場合は、相続税の申告が必要です。動産の種類・評価方法・評価額を明細書に記載して申告します。

よくある質問

自動車の相続で名義変更をしないとどうなりますか?
名義変更をしないまま自動車を使用し続けた場合、自動車税の納付通知が被相続人名義で届くなどの問題が生じます。また、事故を起こした場合に保険の適用に支障が出る可能性があります。さらに、将来その車を売却や廃車にする際に、相続手続きが複雑になります。名義変更には期限の定めはありませんが、できるだけ早めに手続きを行うことをお勧めします。
価値のわからない美術品は、どのように評価すればよいですか?
美術品の相続税評価は、原則として「売買実例価額」や「精通者意見価格」によって行います。知名度の高い作品の場合は、美術品の鑑定を専門とする鑑定士に依頼し、鑑定書を取得することが望ましいです。鑑定費用は数万円から数十万円かかりますが、高額な美術品の場合は適正な評価のために必要な投資です。不明な場合は税理士に相談しましょう。
家財道具にも相続税がかかりますか?
はい、家財道具も相続財産に含まれ、原則として相続税の課税対象です。ただし、一般的な家庭の家財道具は中古品としての価値が低いため、まとめて数万円~数十万円程度で評価されるケースがほとんどです。高級家具やブランド品、骨董品など価値の高いものがある場合は、個別に評価する必要があります。